彼は秘密の女ともだち

2014年 フランス
 
出演:アナイス・ドゥムース、ロマン・デュリス
 
※ネタバレ有り
 
クレールとローラは、小学生の時からの大親友。親友のまま、成長し、それぞれに結婚して、幸せな家庭を持った。
しかし、子供が出来たばかりのローラは、不慮の事故で死んでしまう。
 
その子の名付け親でもあるクレールは、ある日、様子を見にローラの家を訪ねる。
しかし、そこで見たのは、女装し母親を演じて赤ん坊を抱いている、夫のダビッドの姿だった。そういう性癖があるのだと、告白するダビッドを、クレールは変態だと非難するのだが、翌日、ダビッドから話をしたいと連絡を受け、再び彼の家を訪問する。というところから、二人の関係は徐々に変わっていく。
 
最初は、女装癖を持ったローラの夫とローラの友達、というだけの関係で、
女装癖に嫌悪感を持つクレールだが、まるで女性のように考えふるまうダビッドを見て、だんだんとその女装を面白がるようになっていく。
そして、女性的な感性を持つダビッドと、まるで女同士のようにつきあえることに、楽しみを見いだしていく。
そのことを、クレールは夫のジルには内緒で、女装したダビッドのことは、女友達のビルジニアということにしてしまう。
それは、たまたまのことであるが、名前をつけたことにより
親友の夫のダビッドと女装したビルジニアというふたつの人格は強化され
二人は、秘密を共有する仲間へとなっていく。
 
ダビッドにとって、自分の秘密を明かせるのはクレールだけであり、
かけがえのない存在だ、そしてクレールにとってもその欲望と秘密を受け入れることが快感となってくる。そして二人の関係は深まり、お互いがお互いにとって、必要な存在であることに気づくようになる。
しかし、そこまでは、クレールにとって、あくまでビルジニアがその相手だったはずなのだが、やがて、クレールは、女装した女友達としてのビルジニアも男性のダビッドも実は切り離すことのできない、同一人格であることに気づいてしまう。
ダビッドは、女装癖はあっても、ゲイではなく、女性と愛し合う人間だ。
 
悩むクレール。そして最後に選択するのは?
というのが、あらすじ。
 
おそらく、ダビッドの女装癖がなければ
クレールは平穏にジルと暮らしたはず。
しかし、女装癖をもったダビッドの登場でクレールは知ってしまったのだ。
本当に必要としあえる関係を持つことこそが人生の歓びだと。
そして、そのためには身勝手になることも肯定できると。
 
という、オゾンにしてはかなり直球な映画なんだけど
個人的には、そのことに共感できるかといわれれば、ちょっとクエスチョン。
欲望を肯定するよりも、むしろ、自分の欲望に気づきつつも、それを押し殺してストイックに生きるなんて方に共感してしまいがちではあるし。最後に残るのは、残されたクレールの夫のジルがかわいそう、という思いだったりする。
 
なので、この映画の評価は、結構微妙だったりします。
オゾン、好きなんですけどね。