The Future

2011年 アメリカ
出演:ミランダ:ジュライ、ハミッシュ・リンクレイター
 
※ネタバレあり
 
ミランダジュライの新作。といっても2011年ではあるが。
前作「キミと僕の虹色の世界」が愛や世界への信頼にあふれたものだったのに対し、こちらは、愛や世界への疑念に満ちている。
 
確かなものなど何もなく、
とりかえしのつかないことは、起こるという不安。
 
本作は、監督演じる主人公と同棲中の彼氏の物語。
彼らは、怪我をした猫を拾う。連れて行った保護センターのようなところで
その怪我がなおるまで30日かかるので、その時に迎えにきてと言われる。
そして、もし遅れたら処分することになると。
 
30日たったら、いままでのような自由はなくなるので
それまで、好きなことをしようと二人は考える。
 
彼氏の方は、街で偶然声をかけられた、環境保護団体の手伝いをすることにする。
ダンサー志望だった彼女は、毎日自作のダンスをユーチューブにアップしようと考えるのだがうまくいかない。
そして、どういう訳か、偶然出会ったナイスミドルの男性と浮気を始めるのだ。
 
正直、なぜ浮気にいたったのか、その経緯はかなり唐突で、よくわからない。
しかし、浮気は本気となり、二人は別れてしまう。
 
とりかえしのつかないことは起こってしまったのだ。
そして二人は、この先どうなるのか、というのがこの映画の本筋。
 
もひとつの流れは、拾われた猫のモノローグで語られる。
猫はいう。いままで、夜の暗闇が怖かったと、でももうこれからは、そんな暗闇を気にする必要はなくなると。
あと、迎えにきてくれるまで何日だろうと。
そして「僕はふたりのもの、二人は僕のもの」と思う。
要所要所で挿入されるこのモノローグは、映画のトーンにかなり影響を与えている。
 
しかし、二人の別れ話のごたごたで、迎えに行くのが一歩遅くれ、猫は処分されてしまう。ここでも起こる、取り返しのつかないこと。
 
ラストで、彼女は、彼氏が一人で暮らす、昔の家に戻るのだが
彼氏は、もう相手にしない。
そして彼女はある曲をかける。それは、もし、二人がお互いがよくわからなくなったら、思い出す為の合図の曲を決めようと考え、決めた曲。
映画は、しかし二人がもとに戻ったのかどうかは分からずに終わる。
 
かなり混乱した複雑なストーリーで、ひとつのストーリーというよりは
何か思考実験のようでもある。
 
それは監督自身の、この世界は果たして再び信じることができるのか、
という命題を解くための実験。
その実験は成功したのかどうかは分からない。
 
しかし、その痛々しさは心に残る。
私は、嫌いではない。