わたしはロランス

2012年 カナダ・フランス
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:メルヴィル・プポースザンヌ・クレマン

※ネタバレ有り

性同一性障害を抱えるロランスと
その彼女フレッドの、ラブストーリー。

一番印象に残ったのは、
フレッドと別れた後、ストーカーのようになっていたロランスが
許しを貰い、彼女の家を訪ねる場面、
その、本当にうれしそうなロランスの笑顔。

その笑顔に、ちょっと心を打たれた。

なんだろう、母親に100パーセントの信頼を感じている子供が
母親に見せるような、笑顔。
その笑顔が、あまりに無防備すぎて、逆に怖くなるようなそんな感じ。
ああ、大人なんだからそんな無防備な笑顔を見せちゃだめだろう、
といいたくなるような息苦しさ。

考えて見ると、ドランの映画は、すべてそんな息苦しさに満ちている気がする。
無防備に、100パーセントの愛情を求めることのせつなさと、それを失う恐怖。

そして、家を訪ねたロランスは、フレッドと久々に再会し、
盛り上がった二人は家を飛び出してしまう。
彼女には、夫も子供もいるのに。
しかし、二人の逃避行は長くは続かず、今の生活や家族を捨てることのできないフレッドと、結局はけんかをして、また別れてしまう。

 
それから、数年後、また二人は再会する。
フレッドは、既に夫と別れている。
しかし、ロランスの淡い期待とは裏腹に彼女はいう、
「そろそろ地上に降りてきたら」と。
ロランスは、それを聞き、本当に二人の関係が終わったことを知る。

という、大人な感じのビターな結末。
失うまでは恐怖だけど、失ってしまえば、それは既に過去のことだ。
せつないような、でも息苦しさからは解放されて、ほっとしたような。

ところで、この映画は、ロランスが性同一性障害を抱えて、
それをカミングアウトするところから、彼女との間に溝が生まれるという話だが、性同一性障害とゲイとどう違うのか、あまり理解していなかった。

ロランスの場合は、体は男性、心は女性だけど、女性が好きというタイプ
だったんでしょうね。