獣は月夜に夢を見る

2014年 デンマーク・フランス
監督:ヨナス・アレクサンダー・アーンビー
出演:ソニア・ズー
 
※ネタバレ有り
 
 
デンマークの寒村を舞台とした狼少女の物語。
 
大人になりかけつつある少女マリーは
体に異変を感じ、病院にいくのだが、原因は判然としない。
家では、車イスに座ったきりの母親を父親と介護する毎日。
そして、母親の過去のことが、だんだんと明らかになるにつれ
自分が、ある種の怪物であるらしいことが分かってくる。
 
村人もそのことを知っているらしい。
母親も怪物であり、過去に起こした惨劇によって
薬によってその獣性を押さえているだけだということを。
 
そして、悲劇は起こり、マリーは働き始めたばかりの
魚の加工工場でも、迫害を受けるようになる。
唯一の救いは、マリーに好意を寄せるダニエルの存在。
 
しかし、迫害はエスカレートしていく。
 
マリーは、怪物であり、そのことを村人も知っている。
そして、その獣性が目覚めたことが知られたら、
もう、マリーが村で人々と共存することは不可能だ。
 
生きるために、戦うのか、それとも
好意を持ってくれているダニエルとどこかへ逃げるのか。
そして母親と父親のように、暮らすのか。
ダニエルは、そう言ってくれているが、
それは、希望なのか?
 
だから、この物語は、どこへも向かわない。
どこにも希望はなく、どこへも向かいようがない。
ただ、狼少女の獣性が本能のままに爆発し、
彼女のことを想うダニエルの愛がある。
 
この永久に閉じた世界の中で
マリーや二人の居場所はない。
ただ、その息づかいや手触り、
そして想いだけがリアルなものとして残る。
 
そんな静謐な世界にふりそそぐ、
陽の光が美しい。
 
唯一難癖をつけるとすれば、
全く世界観にそぐわない、エンドロールの歌くらいか。