勝手にふるえてろ

2017年 日本
監督:大九明子
出演:松岡茉優 他
 
※ネタばれあり
 
松岡茉優演じる、ヨシカが全編にわたり
泣いて笑って、妄想し、毒づいて、叫びまくり、
勝手に有頂天になって勝手に落ち込み、自爆する、
という感情が暴走するジェットコースタームービー。
いやあ、約2時間の映画なのだが、ああこれで終わりかと
残念な気持ちになったのは、久しぶりかもしれない。
 
なんといっても、この映画の魅力はヨシカというキャラクターの人物造形。
中学からの片思いを妄想するだけの、
コミュニケーション下手で自己肯定感の低い女子。
となったら暗い、地味、挙動不審というようなワードが並びそうなものだが、
ヨシカは、妙にエネルギッシュで、結構お洒落だ。
変なことや人には的確にツッコミを入れることもできるし、
世の中一般の、「暗い」というのとはちょっと違って、ださくはないのだ。
このアンバランスで、矛盾をたくさんはらんでいる感じが、リアルだなあと思う。
類型的でなく、枠に収まらない感じ。
実は、そんな枠にはまる人なんてこの世界には存在しないし、
だから、この映画は、誰もが共感することができる。
 
松岡茉優が、WEBのインタビュー動画の中で、
「年上の人にも、今の若い人のリアルを感じてもらえるんじゃないか」
というようなことを話しているのだが、それは彼女の誤解だ。
このリアルは全ての世代、男女を問わず共通するもの。
おじさんも、おばさんも変わりはしない。
 
こじらせ女子、という言葉もあるようだが、
この映画は、そんな言葉を吹き飛ばすパワーを持っている。
そんなレッテルを貼って理解した気になるばかばかしさ。
もっと、人間は不可解で、多面的で、予測不能だ。
居場所や相手によって、自分は変わるし、
どうでもいいような一言で、感情は動く。
どうしてそうなるなんてことは、自分にだって分からない。
最後にヨシカが選んだことが正解なのかどうかよく分からないけれど、
そこも含めて圧倒的な肯定感がここにはある。