過激派オペラ

2016年 日本
監督:江本純子
出演:早織、中村有沙、他
※ネタバレ有り

アングラレズ劇団の話なのだが、
そのアングラとかレズという要素をとっぱらってしまえば
しごくまっとうな青春ストーリーだ。

カリスマ的な才能のある、演出家、重信ナオコの率いる劇団「毛布教」の
オーディションで、重信は女優、岡高春に一目惚れをする。
この二人のラブストーリーを軸に物語は進んでいく。

最初は、レズっ気のない岡高は拒否するのだが、
重信の思いにほだされ、つきあい、一緒に暮らすようになる。
そして岡高が主演女優として演じた旗揚げ公演「過激派オペラ」は
大成功を収め、いろいろな人が集まってくるようになる。

その中に、有名女優ユリエがいた。
彼女は才能もあり、次第に重信の演出にも意見をいうようになり、
重信もそれを重用するようになっていく。
劇団の中で、唯一絶対のカリスマであった重信が変質してくるともに、
恋人である岡高には嫉妬や不満が生まれ、そして二人は別れてしまう。

そしてそれをきかっけに、劇団は崩壊へと向かっていく。

毛布教の芝居は、アナーキーで実験的。
「テロエロ」と名乗るくらい、エロと暴力にあふれている。
それは、ある種の女性たちから、圧倒的な支持を得ている。
信頼できるリーダー(演出家)がいて、その集団の中では
性的なものも含めて自分の欲望をさらけ出すことができて、
それが肯定されるという世界はある種のユートピアだ。
しかし、それはリーダーの重信が絶対的リーダーだったからこそ成り立つ世界。
そこに、ユリエという異質な価値観を持った才能の加入により
重信の絶対性がほころび、そのユートピアの希有なバランスは壊れていく。

そのもろさたるや!でも青春ってそんな感じだよなあと、思う。
間違いだらけ、暴走しまくりで、熱くて、せつなくて、
仲良くなるのもあっという間なら、壊れるのもあっという間だ。

まだ、劇団がハッピーだった頃の一場面で
稽古場で水を掛け合い、下着姿になって、みんなが通りに出て行くシーンがあるのだが、そのシーンのキラキラした感じがちょっと素敵で、
それが余計に壊れやすい世界を際立たせていたようにも思う。