ゲットアウト

2017年 アメリ
監督:ジョーダン・ピール
出演:ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ他

ニューヨークに暮らす黒人カメラマン、クリスは恋人と
恋人の両親の暮らす辺鄙な田舎を訪れる。
恋人は白人で、クリスは自分が黒人であることを
ちゃんと伝えているのかと気にする。
恋人のローズは、うちの両親は進歩的だから
そんなことを心配する必要はない、と笑う。

というところで、疑念がひとつ浮かび上がる。
果たしてそれは本当なのか、
これは何かの伏線なのか、という疑念。

そして、訪れた両親宅では、
黒人であることは全く意識されず歓待を受ける。
しかし、その歓待は、いささかオーバーなのでは?
そして黒人の庭師とメイドがいるのだが、なにか応対がぎこちなく不自然だ。
母親は精神科医で、禁煙しているクリスのために催眠術をやってあげるという。

こんな風に、疑念は、ふたつ三つと増えていく。

翌日には、近隣の人を招いてパーティーが行われる。
恋人のローズは、それをいやがっている。
そして、黒塗りの車で続々とやってくる招待客。
しかし、かれらは変だ。クリスに対する態度が不自然なのだ。
徐々に、不気味さと違和感は、増幅していく。

クリスの携帯の電源を切った黒人のメイドは
クリスが詰問すると言い訳するのだが、
突然、笑顔とも泣き顔ともつかぬ表情で「ノーノーノー」と叫びだす。

疑念の数は、どんどん増え続け
そのひとつひとつが、かなり怖い。

招待客の老婦人の連れ合いの若い黒人は
フラッシュを浴びたとたんに叫びだす、「ゲットアウト!(逃げろ)」と。
果たして、敵は誰なのか?
不穏な緊張感と疑念はふくれあがっていく。

白人コミュニティに迷い込んだ、黒人という設定。
黒人差別といえば、KKK的な狂信的なイメージもあり
そういうイメージも利用しながら、
この世界は徐々にその異常な姿を現していく。
微妙な視線や、セリフ、仕草によってかもしだされる違和感。
その積み重ね方は、かなり見事だ。
この映画は、そういう細部を楽しめると、楽しさは倍増する。

なんといっても、黒人メイドの泣き笑いの表情を見るだけでも
この映画を観る価値があるのではと思う。

ちなみに、恋人のローズの家はアーミテージ家というのだが、
この名前にもなにか意味が込められているのだろうか?