毛皮のヴィーナス

2013年 フランス
 
 
出演:エマニュエル・セニエ、マチュー、アマルリック
 
※ネタバレあり
 
 
予備知識ゼロで観た本作であるが
なかなか、スリリングな展開で結構楽しめました。
 
マゾッホの小説「毛皮を着たヴィーナス」を舞台化するための
オーディション会場に遅れてやってきた謎の女優。
彼女の強引さに負け、台本作家はふたりで読み合わせをすることになる。
最初は、厚かましい女優にうんざりしていた台本作家だったが、
演技がはじまったとたん、雰囲気を一変させ、完璧な演技をみせる彼女に魅了され、
そして、ふたりで演技を続けるうちに、劇のことなのか、それとも現実のことなのか
境界が曖昧になり、だんだんと主従が逆転していく。
そして、台本作家の内面の欲望があらわにされ、女優に支配されていくという内容。
 
ベースとなっているのが、マゾッホのSM小説なので
だんだんと、ふたりの主従関係が逆転し、台本作家が支配されていくプロセスが
絶妙でおかしくもスリリングだ。
なにより、素晴らしいのは、女優の演技。
たいして美人でもないし、最初は下品で厚かましい売れない女優の雰囲気が
演技が始まったとたんに一変し、知的で上品で、なにより、セクシーで魅力的に見える。
これなら、演出家が魅了されるのもうなづけるという説得力だ。
女優とはこういうものかと、驚かされました。
で、台本作家はちょっと気が弱そうで、いかにもな展開ながら
結局彼女の思うがままにコントロールされることに。
本来は、男が女を従属させるという話しなのだが
主従が逆転することで、台本作家は心の奥底にあるMっけをどんどんひきだされてしまう。
このあたり、ビジュアル的にはさほどいやらしくはないのだが、
精神的に支配され、台本作家がどんどんのめりこんでいくさまは、とてもエロチックだ。
最後に、台本作家は舞台の柱に縛り付けられるのだが、
この放置プレイな感じもなかなか素敵です。
 
監督は82歳にナルロマン・ポランスキー。女優を演じているのは、監督の奥さんであるエマニュアル・セニエ。きっと、自慢の奥さんなんでしょうね。