紙の月

2014年 日本

 監督 吉田大八

 出演 宮沢りえ

 

宮沢りえ演ずる、銀行に勤める主婦が、若い男にいれあげ、お金を横領するというお話。
でもなんだろう、宮沢りえが演ずると、必死さとかせっぱつまった感じではなく、
感じられるのは、はかなさのようなものか。
いつ、こわれても別にいいや、というような刹那的でもあり、妙なふてぶてしささえ感じてしまう。
たぶん、それは宮沢りえのそのままの存在感に思えるんだけど
その現実感というか想いの希薄さが、さわやかすぎて僕にはちょっと物足りない。
若い男との関係も、普通の不倫カップルくらいで、特段の後ろめたさやいびつさは感じられない。
中年女が、若い男をつなぎとめるために必死になっているという雰囲気でもないし
貢ぐことにのめりこんでいるという風でもない。
なにより、そこにお金が絡んでいるにおいがあまりしない。
このどろどろずぶずぶではない関係の在り方っていうのが、監督の狙いなのか、それとも宮沢りえの解釈に監督がのっただけなのか分からないが、正直もっと狂気が観たかった。
「桐島〜」がよかっただけに、ちょっと期待したけど、いまひとつでした。
あと、小林聡美はちょっとオーバーアクションかな。
大島優子は唯一良かったと思う。

Coldplay "Yellow"

コールドプレイの音楽は、難しいことはなにもやっていないのに

微妙な音の重なりや、変則チューニングで、深みのあるものになっている。

この”Yellow"も、デビューアルバムのものであるが、

音の響きについては、結構凝っている。

売れるにはそれなりに理由がるということか。

 

ということで、今回はColdplayの"Yellow"です。

 


Coldplay"yellow"cover feat. Miku Hatsune

アンナ・カヴァン 「ジュリアとバズーカ

 

ジュリアとバズーカ

ジュリアとバズーカ

 

 

アンナ・カヴァンの分身である「私」を主人公とした短編小説集。
ここに描かれているのは、カヴァンの人生そのもの。
 
冷淡な両親のもとで、愛情に恵まれずに育てられた影響で、
幼い頃から精神の安定を欠き、自分の居場所を見つけることが出来なかったカヴァン。
その不安定さは、大人になっても変わらず、
いつしか、ヘロインが手放せない生活を送るようになり、
精神病院への入院も体験する。
そんななか、安住の地と信じ、おそらく何かにすがるように結婚するも破綻。
それを二度繰り返し、カヴァンは何かを見つけようとすることさえ、あきらめてしまう。
それでも、創作意欲だけは持ち続け、死ぬ間際まで著作を書き続けた。
彼女にとっては、創作とヘロインだけが生きるための全てだったかのしれない。
 
本作には、不安と孤独におののく彼女の心象風景や生活の断片が淡々と描かれている。
この中での「私」は、わずらわしい生活や他者との関係に耐えられず
それを認識することすら止めてしまおうとする。
しかし、彼女は、それが不可能なことも知っている。
繰り返し出てくるクルマのモチーフ。
彼女は、人をひきながら霧の中で車を猛スピードで走らせる。
それは現実には存在していない人々のはずだが
最後には、警察に尋問されるところで物語は終わる。
自分や他者の不在すら信じることのできない、出口のない、絶望。
しかし、それは、誰かと信じられる関係を結べることを
心の底では願っていることの裏返しでもあろう。
 
ときおり語られる、かつての幸せだった結婚生活のこと。
彼女は二度結婚し、いずれも離婚している。
写真を見ると、なかなかの美人であり、精神的に不安定な文学少女
おそらく、ある種の男性を虜にするような魅力があったのではないだろうか。
「俺が守る」と庇護者となりたがる男性が。
しかし、彼女の精神的な不安定さは、生半可なことでは背負えるものではなかった。
本作では、些細なことから、信頼関係にひびが入り、壊れていく様がうかがえる。
結婚は、彼女にとって、おそらくただひとつの希望であったはずなのだが、
いつのまにか二人の関係のなかに疑念が入り込み、結婚生活の続行を不可能にする。
必死に探していた安心出来る場所や幸せは、彼女の手のひらからするりとこぼれて、
もう二度と戻ってはこないのだ。
 
カヴァンは、1968年、67歳でこの世を去った。
死後いくつもの未完の作品が発見され刊行された。
本作はその中のひとつ。
こわれもののような、心の記録は、切なくも美しい。
 
 

毛皮のヴィーナス

2013年 フランス
 
 
出演:エマニュエル・セニエ、マチュー、アマルリック
 
※ネタバレあり
 
 
予備知識ゼロで観た本作であるが
なかなか、スリリングな展開で結構楽しめました。
 
マゾッホの小説「毛皮を着たヴィーナス」を舞台化するための
オーディション会場に遅れてやってきた謎の女優。
彼女の強引さに負け、台本作家はふたりで読み合わせをすることになる。
最初は、厚かましい女優にうんざりしていた台本作家だったが、
演技がはじまったとたん、雰囲気を一変させ、完璧な演技をみせる彼女に魅了され、
そして、ふたりで演技を続けるうちに、劇のことなのか、それとも現実のことなのか
境界が曖昧になり、だんだんと主従が逆転していく。
そして、台本作家の内面の欲望があらわにされ、女優に支配されていくという内容。
 
ベースとなっているのが、マゾッホのSM小説なので
だんだんと、ふたりの主従関係が逆転し、台本作家が支配されていくプロセスが
絶妙でおかしくもスリリングだ。
なにより、素晴らしいのは、女優の演技。
たいして美人でもないし、最初は下品で厚かましい売れない女優の雰囲気が
演技が始まったとたんに一変し、知的で上品で、なにより、セクシーで魅力的に見える。
これなら、演出家が魅了されるのもうなづけるという説得力だ。
女優とはこういうものかと、驚かされました。
で、台本作家はちょっと気が弱そうで、いかにもな展開ながら
結局彼女の思うがままにコントロールされることに。
本来は、男が女を従属させるという話しなのだが
主従が逆転することで、台本作家は心の奥底にあるMっけをどんどんひきだされてしまう。
このあたり、ビジュアル的にはさほどいやらしくはないのだが、
精神的に支配され、台本作家がどんどんのめりこんでいくさまは、とてもエロチックだ。
最後に、台本作家は舞台の柱に縛り付けられるのだが、
この放置プレイな感じもなかなか素敵です。
 
監督は82歳にナルロマン・ポランスキー。女優を演じているのは、監督の奥さんであるエマニュアル・セニエ。きっと、自慢の奥さんなんでしょうね。

 

ピアニスト

2001年 フランス
 
 
出演:イザベル・ユベール、ブノワ・マジメル
 
※ネタバレあり
 
 
支配的で過干渉な母親のもとに育ち、
性的に成熟することができなかったエリカ。
30を過ぎても結婚もせず、母親と二人暮らしだ。
ピアニストとしては一流で、音大で教鞭をとっているものの
その裏では、ビデオ個室で性欲を満たすような生活。
 
母親は、いまだに彼女がどこで寄り道したのかということも厳しく問いつめ、
彼女がちょっと派手な服を着ることも非難する。
反抗はするものの、最後には母親に許しを請うエリカ。
 
母親から、自立できていないエリカであるが、
しかし、一歩外に出ると威厳のかたまりのようだ。
どんなときも笑顔をみせることなく、実に辛辣に生徒の欠点をあげつらっていく。
それは、どれも的確だが、暖かみは一切ない。
母親の支配から抜け出せずに、自立できないエリカは、
その反動のように、他者に対しては支配的に権威という鎧を身にまとうのだ。
 
そこに現れるのがイケメン大学生ワルター
彼はエリカに一目惚れし、自分の専門の工学を捨て、エリカのピアノの授業を受けることにする。ピアノもうまい、エリカもうならせる腕前だ。
その上、スポーツも得意で友人も多い。エリカとは正反対の人間だ。
最初は、彼の臆面もない求愛をいつもの権威の鎧であしらうエリカだったが、実は興味しんしんだ。そしてある出来事をきっかけに、二人はお互いの欲望を満たすことになる。 
 
たががはずれたエリカは、さらに己の欲望をさらけ出す。
愛情などというありきたりなものでは満足できないもっと倒錯した被虐的な欲望だ。
しかし、いかんせん、ワルターはいかにピアノがうまくても、ただの常識的なお坊ちゃまでしかなく、エリカの欲望をののしり、主従の立場は逆転する。
そして複雑で、倒錯したエリカは、常識的なワルターに無様に奴隷のように扱われるのだ。それは、それは彼女の望んだものではなかった。
ワルターは母親のかわりにはなってくれず、ただ、暴力的にふるまうだけ。
彼女は、ぼろぼろになりながら、再び心をとざし
母親の支配を受け入れ権威という鎧を身にまとうのだ。
 
支配的な母親と精神的に不安定な美しい娘、
娘には被虐願望が有りそこに現れる男性、ということになれば王道の官能ストーリーだ。
男性と娘のどろどろの関係が気分を盛り上げるはずなのだが、この映画は、そうはならない。むしろ、そういう官能性をできるだけ排除しようとする。
官能性のない、無味乾燥とした即物的でむきだしの行為は、ただひたすらに醜悪だ。
 
そして、エリカは、ラストでナイフを持ち演奏会へと向かう。
ワルターとの関係を清算するために。しかし、家族と現れたワルターは、何事もなかったように明るく声をかけ、そのままいってしまう。ひとり残されたエリカは自分の肩を刺し、血を流しながら街の中へ出て行く。
 
この場面にも、ドラマチックさやロマンはない。
ブラックスワンなどとは違う。決して美化することはない。
 
なかなか、ひとすじなわではいかないミヒャエル・ハネケの監督作品である。
カンヌでグランプリをとったということであるが、そこまでの映画だろうか。
主役二人の演技はすばらしかったが。

 

High and Dry

映画とは、関係ないですが

バーチャルなバンドプロジェクトをはじめました。

UKのオルタナ系を中心にカバーしてます。

第一弾は、Radioheadの「High and Dry」。

歌は初音ミクさんです。

 


Radiohead "High and Dry" cover feat.Miku Hatsune