ブレードランナー2049

2017年 アメリカ
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
出演:ライアン・ゴズリングハリソン・フォード

※ネタバレ有り


いやあ、いい映画でした。
ちょっと気が早いが、今年のベストワンでもいいかもしれない。

前作の世界観を微塵もくずすことなく
さらにスケールアップした映像美にまず圧倒される。
巨大な堤防に囲まれた大都市。
終始雨に煙る巨大なビルの間を飛ぶスピナー。
タイレル社を継いだウォレス社の美しいインテリア。
廃棄物と廃墟に埋もれた、荒れ果てた郊外。
ビルの壁面を彩るエロティックなムービー。
カジノの廃墟で、映し出されるプレスリーのホログラム。
全てに隙が無く、パーフェクトな完成度だ。

その舞台で語られるのは、ブレードランナーKの
愛とアイデンティティ喪失の苦悩。
レプリカントに関するある疑惑を追うことになったK。
しかし、その謎を追ううちにKは、自分のアイデンティティの疑念と
向き合わざるを得ない状況に追い込まれていく。

苦悩するKを支えるのは、AIのジョイ。

彼女は、触れることはできない3Dホログラムだ。
最初は、そういうバーチャルなものにしか興味を持てない男の趣味として
描かれるのだが、だんだんとその関係は変化し、
本物の愛があるように見えてくる。
まるで人間同士のように。
そして、ここで描かれるラブシーンは、
その美しさとせつなさにおいて、比類がない。
映画史に残るといっても過言ではないかもしれない。

前作では、デッカードは、レプリカントとは明確には
明かされてはいなかったので、デッカードとレイチェルの関係は、
人間とロボットの、いわば禁断のラブストーリーともいえるものであったが、
本作は、ロボットとAIのラブストーリーということになる。
だから、その愛や苦悩が深ければ深いほど、
それが本物ではないという絶望が際立ってくることになる。
自分が考えていることがオリジナルではなく、
誰かの思いの複製、あるいはただのプログラムに過ぎない
という絶望には救いがない。

これは、そういう苦悩と絶望の物語。
全ての希望を打ち砕かれ、それでもなお、あがこうとする男の話だ。
ラストで、Kが地面に横たわり、
そこに雪が降り注ぐシーンが切なく、このうえもなく美しい。

Kを演じているのは、ライアン・ゴズリング
彼は、こういう報われない役がとてもよく似合う。